服役する鼓動枯れゆく木も打たせて

泥分けてまで咲く花の根を手に束ねる

ハンマー抉れている柄に横たわりに来る小熊

無言電話と無言で通じ合う朝靄

水の名を吸うため今名ばかりの蝶

すべてもげた平地から指差されている

新しい樫を逃げ膨らむ記憶の陰

漂う笹舟いつか稲妻海まで立たんとす

ドアを挟むドアの連続誰か通る

日の当たるカーテンと舌にくるまれる

水底の扉まで飲む反射しつつ

歌声で雨音掻き消すほど半眼

足も触手であり触手床の胴から窓から

おし微睡む家屋からインテリアの排泄

ヘアバンドが外されても笑っている少女

打つべき鐘の残響と知りつつ在る僧

ハブとはぐれ森の飛沫のひとつは母

啄む羽もなく風前に杭として

騒ぐと静かの間などないただ線鳴く

飢えに見立てた砂鉄も凌がれて界面