要塞へ双眼鏡に雲詰めて

破壊しても木魚の中チョコ溶け始める

柱の傷はおととしが存在した証

象が象を踏んでぺらぺらに花吹雪

カルデラ湖の情念が毛を魚人に槍を

重過失の世に幻獣の肉五トン

まだぬくい杖なぜここに噴水が

寂滅の鋭角五つ水に溶かす

綺麗な首を山脈で塗る貨物列車

防波堤濡れる恥濃く傘を尽くす

舞い捧ぐ日干の血眼は西へ

歪む止マレの文字蒸発し奈良の都へ

慰安するキリン嵐の昼担い

羊毛疎んじ後ろめたく匿名の過去も

山菜を合理の狭間に蒸し返す

親類縁者皆角生やし雲肥やす

貝類の覇気に絆され調査団

盾の裏に三国志が好きだったひと

土はドリルを澄ませている噎ぶ麦藁

老処女性如何に水玉の海を刺すか

捕虫する椀に無閃のパステルカラー

カプセルホテル残酷に宙しかとねじれ

庭に四角い溝冷蔵しているのか木々を

阿修羅たる根拠引き抜くペンチの熱

豆腐の空組み替えては縫う八咫烏

山の鏡はまだ暗い婦人バリカンを手に

失せれば茎に刺すのみ命令形の半月

枕濡らす煮えたウサギのウサギ跳び

混濁へと滅びた文明にも重力

天変地異にハンカチ一晩浸しておく

煙に巻かれて顔新しく姉妹脱ぐ

泣く代わりに義眼を這う鬱の画数

氷山の子の合唱ホログラフを生む

大河千本瞬時に涸れ瞬時に天空

能面の下に砦は石を乱す

缶引く点ひとつ画家のかく日照りに神

歯のない大口もある根底には絵ぎしり

窓越しの遠く近くにある路頭

心理の外針密かに佇むシナリオ

月煌々体内に紅差す如く

炎天の篦恐ろしく語り継ぐ

銃に似た眠りを米俵にゴム弾

混迷に都会華やぐ三つ巴

斑を葉巻型物体飛ぶ牛の持つ

老婆死ぬ鍋の空疎に遺書を煮て

島滅ぼすボランティアたちの羽を毟り

一日が終わる魚介を暖簾に削ぎ

水臭い人間いやしくも粘膜

喪失感を蝶の餌場に霞む酸

脈のない来世の袋に羽毛ばかり

決して罪なかくれんぼでは村ならず

ぶら下がる猿問題は生き血の揺れ方

近所気怠き段と化す不遇を平屋に

餅蹴飛ばし飛び散る醤油の来訪者

ハの字にカバのオスメス並べるスキーしたい

御者揺さぶるサイダーの酔い荷はマスカット

若くして一つ目に交わる平行

寿司屋の奥愛と鳴かない魚のルポ

極地に蝕カーリー刷りまくって汗する

頸動脈鳴らしてホルンを売る夜明け

地上で藁に縋る家族たち魔境へと

自我引き裂く緑の蜘蛛の巣のコピー

同盟の海光る幽霊滑車

肉の見える羊が野の舌先に丸く

甘い煙がシャワーを浴びている終盤

不憫な隊諸国錐揉みして歩く

紐ブチ切れ術中に舞うトートロジー

生まれて笑いながら髪を抜く静かな夜だ

パーソナリティーの乖離は音を発する沼

皮脂拭う枯れ葉吹かれて残党狩り

その名はスプリンクラー部屋で林檎を切り刻む

土砂深く墨爛漫の火花散る

歌人に群がる百獣咲き乱れんがため

傾く写真の奥行きへ爪伸ばす家族

私有する頭蓋に浅く張る光

首長竜圧縮再絶滅も辞さず

一粒の星ほくそ笑むマトリョーシカ

陸と海の断絶味噌汁に漂う

常夏剥がせば死相グリーングリーン歌う

顔撫で下ろす笑みに代えて高層階より

雲満遍なく夕べに逆日の出を吐き出す

幹にひしゃげた標高に谷噤む谺

常駐する階下の発光プリンに纜

気を許す草原曇る罅を育み

泡薫じ死別の距離に撒き散らす

不可視文字からなる中二階に星吊る

処刑具嗅ぐ終生薔薇受け取るよりは

通貨に穴がわたしは凪を見るだろう

臓腑にある鳥の食指に灼かれる昼

他者の影と結ぶ手首からドバドバ稲穂

花園に群集心理の露流転

晴れやかな悪化の一途にシェルパの帯

湿る風の黄噛み赤噛みひとたび肉

土の円周上に直角なるアメリ

爪痕に燃料染み込む飛び立つため

蛇さざめく充血下のスープの淵に

烈火の如きトロン、其はトロンとして冬雷

舟縛られやむなく水介在する沢

温められ卵よ摂理を外れんか

あわれあわれこの世のてっぺんにもししとう