棘だらけのコート着て日溜まりに立つ

告げるな鳥しかも黒く千切れた明るみに

無限に長い刀を抜く風夏は鞘

夜汽車か荷馬車に裏か表を揺られ歌劇団

蛾を留まらせておく窓に不謹慎包む家

猟犬ほぐれて火に浮かぶ筋肉の川

ホテル揺らす金粉その完全なる躍動

蛇百死千景のとぐろ巻く峠

坊主が屏風に卍固めにされ飛び散る

射精しつつ征く師霊媒の痕ぬらぬら

杭立つ土地を逆さまに仮面の雄叫び

船紅蓮に闇を誘い従うか否か

低地冷ます豪雨に混ざらんか線路よ

血が死で満ちていないの誰かに見られたら困るわ

泡惑い海峡皺だらけに「オ、オー」

孤島に甘い多言語まとわりつくビン置く

流れていく鮫は銀彼の頬は海

軒に魔が差し凍る数奇なる運命

言霊のたかる漁船に不在の沢

告げ続けよ名を人格が降りて光

芸尽きて鞭打つ千度のぬるい球

濾紙滲む悲しみに落とされた都市

舌異次元にチョコ頬張り箱には古代の鍵

差異という洒落た現実の日付は億

森羅万象闇の苦さを残し忘れ

夢から見る現実とこちらに鳥居

苔の一種よぎり街という傷は癒えた

情欲恐るべき乱打許し捲る土煙

鐘ひとつ墨の粘りを支える梁

食いしばる歯に鬱蒼と林成る

二歳がぼくの髄膜を電飾で目立たす

社員ら囲みグラスの脚踏む艶めかしく

ビルからビルへ肉を離れたハイヒール

知らず知らず天竺にいてベルト扱く

頭蓋化する支部へ出向激しく鳴り

ようこそ手乗り猿さん棒人間の国へ

雪を吸う遊具がギーと蒼白に

ボロボロ朧朧とパンが歯が老人が

可決のどよめきに見とれている葡萄農家

静かに豚は目を閉じる聖木工ボンド

寝ずの第七金曜日に五芒星滲む

人から思い浮かぶ粉は塩辛いぞ塔

麺巻くフォークに逆らいませんというタイ語

順延され友の舌ばかりのたうつ広場

長針の緊張を解く静物

「広げた手は瞳だよ」即ち少女落下

ステンドグラスは韻だそこへ鐘かくも空しく

群れは何もかも悲惨裸足で靴を煮る

桜の下風薫れば泥ぶつけ合う

茶柱からはみ出す鬼ヶ島の分母

臨月の塀は和風をとどめおく

凍てた果てたと窮地に聳え立つ領主

ポスター破ると鏡がある奥から白濁して

骨をセミナーへ折る星と海と輝く催眠

木の実押す書類に穴のテリトリー

精かすりうっとり流されゆく魚

妖魔の臓腑にメメント・モリ明るい家庭

歌以外も垂れ流す姉妹廃バスでカナダへ

稀な水に恭しく髪剃り落とす

感覚器の触手は見えず天動説

殺人鬼も印刷をする危険水位

球化した黄泉の甘さを目に持つ各自

カクテルバー内部から牛の首錆びる

西に弔いの枠が誰という指示も持たず

電撃の算数踊る古来の里

人間の中から調理済みの肉塊

ダガーひた走るひたこの凹みひた

目眩に輪郭がある淡くどこまでも組織

名付けのよすがにやがて死にゆくもの宇宙

路上の怪数える指がない花も

靴の中がペンキくさい標識にしてよ

岸のパトカーサイレンで血潮掻き回す

連射機オンにして土かけるぬくい毛布に

名刺サイズに海抉られ深呼吸に関わる

吸血す石棺に剣着飾らせ

三つ目を刺して焼く串の先端は三つ叉

ぼくと沈黙乗せプロペラそれ自体の回転

胎外にも炎熱のべろの手毬唄

水平を悟る煙の火が焚かれ

家は不在の皮膚極北に同じ死体

切符はイチゴのスライス沈む船より陸へと

天よ感受し給え無化劇の終わりを

涙滴る宝玉指輪に自我無きマダム

土星樹繁るカウントダウンも負を貫き

常人我々に歌を教えたがる荒野の牧歌を

天地は皮一枚で繋がる首打つ儀式

六角に壁組んで水浸しの椅子

生きながらえることの叫び農夫は耕す

雲育む沃土へ製茶群飛翔

汗ばむお膝元夢が人種に変わる

棲め因子よあばら屋に金糸を垂らして

ストーブに翳している手を離せば断崖

ピカソ薪に喪中喪後なる断定会

血も浴びずに錆びる断頭台上のスピカ

ロマ嘆く弓を川面に擦りながら

戦火鮮やかなる爪なき猿吠えたが最後

意味の形が人間真似る秋の隔壁

山の前は美しくまた沈みゆく裸体

嵐はくたくたの薔薇をもぐ婦女の所以に

小児科とめどなく噴き上げる水が透明