そこら中花柄に凧々あがれ

千切った紙の断面の無数の爪を剥がす

裸足でいるのが怖い黒いゼラチンの昼

ガラスの破片は薄く大樹を押し来る音

鈍痛のラッパから棘のあるホース

膣然と熟女満たせば皆丸刈り

疾風が運んだスペアキーだが手袋だけでは

五感に時雨が撥ね図形の辺さえ過ぎゆく

魚類の断面色失い港を装う

塩レンガ区に消息あり積んでは戻し

バレーの滞空香る首都に陥落の危機

第五斜線に笑顔錆びて通じる電話

肉を埋めればコロッケみたいだよ草原

押し黙る一度を縫うとは鳥の末路

朱塗りの和をザリガニが食う驕り久しく

おとめ座銀河団型脳漿澄み渡る

砂塵と川一縷に貴族の目紫

行き止まりに朽ち果て無地の屏風残す

食用蛙に鉛筆当て鳴き真似の類い

ノートを野と音に分け象の鼻は長い

指紋で嬲るガラスのカレンダーの翌月

水を吸う高齢者の背丈を這う皺

日々と木々がすり替わる虎の威に毒され

橋をくぐり迸るコバルトのポルノ

大麻畑の静かな晩餐日誌焼く

狐の業が降る溝へ凄まじく住む

爆風の幽霊磨く輪廻の溝

刑区の賽の目を凝らし夜霧のラミアへ

穴のない嗅覚コラム切り抜いても

雪渓に面反射する渡し守

二日後に柚子切り落とす印は菱形

見覚えが浮き輪を洗う焦土へと

生爪を茶渋で濁す鶴の媚態

高麗人参束ねる腕時計はデジタル

パンとカレーの待つ小屋墓を毟りつつ

鈴の音鈴自体を吊り分厚い噴煙に戸

園とろけて豚という推測が立つ

白紙に一滴コーヒー染みて届く胎教

舌の根まで青き観光絵図繚乱

灼熱を断つフクロウの心わずか

光よ光この世の椰子柔らかく無害

芯の一部遠ざかり練る銀の河

シンナーに擬態する黴・音符・黴

岬で木馬揺れているさよならの代わりに

フラスコの銀ひやひやと爪を伸ばす

首のない犬に吠えたくなる湿地

らくがき帳を悪鬼はみ出す難燃性

蝶の位相代わる代わる割腹を乱す

罵声幽か空雲山大地どん底

青褪せてくっきり人さらいに揺られていた

どの街路樹も稲妻のコピー石化せよ

星の肌蹴り破る光より速く

概して花は咲くのだろうぐしゃぐしゃの告知

傍受息苦しく盲点華々しく飾られ

肥えて髭もじゃの金歯にニンフうつし世の果て

村雨に箸を止めシート式出棺

爆殺が金環結ぶ庵の責

コーヒーこぼした黒い腕力だ盆地へ国へ

さも息づくように見せかけ巨石のフーガ

櫛で揃う身寄りも日和もない白髪

空き家繋ぐモールス信号聞くために

死後もなお十年毎に工具類

御大のっしと陸に売春して息む

雌の自覚魚捌くとき目玉残す

茎若く祭司の思春期先走る

鉄と鉄分交換し鉄橋に海

遠巻きにリボン捩れて左利き

帝亡き砂漠を噛むオフィスチェアのキャスター

白々と若いトマトに教会建つ

湿る目が和紙を見ている蛹の中

苦み合う四つ葉に綺麗な火の手回す

肉を貸す黒毛の一族とは知らず

ガラス詰めたバケツ置く名はエレベーター

サロン潔癖ぶつほど濁る唾額装され

田明かりへ空気を発語する蛙

膨張する星の地平に霧幾何学

思念大暴れに無層演じ樹上の枝垂れ蛸

掘っても地は逃れ得ず門の一部ということ

絵を書き窓を打つ同じだ毎日が印刷

絶唱終えて夜会服脱ぐ三半規管

鳥の破裂前線北上カフェ閉ざされ

行く手阻むざらざらは祖父だ布団があるから

徹底的に晩節汚す蜂のヘドロ

人形飛躍する落差の空酢に漬け込む

海の色はなんですかニコリともせずナジャ

建てられた素焼きの丸い腹ぶらり

鹿逆走畏れ多くも人生を

フッ素吐きトントンツー鬱病です鬱病です

広場にただひとつ長細くあれベンチ

皮膚の皺に舞いの痕跡杖奪う

祖霊迷うサッカー放送する山奥

自我だったら流れるだろう嘆く形の岩

酸育む緑豊かな湖水地方

押しピンで支流つねる全妊娠者

人間十八十九の頃黒ずくめで失脚

焼けば掛け軸太政大臣の鼻くすぐる

老衰とは天衣無縫ゲラゲラその他

生きながら血垂れ帯抜く覚めない夢

優しいビルの空に鞠弾み図画も病むのね

美人は虚の壺に角があるとき生える