固く結んだ紐で妃を塗るだろう

神経切れて数珠飛び散る木を抜けても国

童話の泥に赤青犇めくのか菱めくのか

狐を売り無傷の玉をバザーで買う

さもありなん粘液忍ぶ西部劇

カトマンズの空に柳のずれてある

里思う筒に備えの蝋流す

海苔をお盆に家族ならばと敷き詰める

この世の石一度に見る死後は雷

血縁の境にシート状の霊

初夏の恨み半分ほどは金魚泳ぐ

光とげとげに書いてにやにやと迫る店長

センターから濁音解さぬ監視蝶

ランタン崖に投げゆっくりおやすみと言う

霧にロシアの文豪塗れてナタ百本

心深く主人の違う暖炉の奥

何がおかしいじゃれてダメにした藁人形

マンションからレシート点線を残して

肉の匂いがしてただそれきり包まれる家

刑の執行あり傘に噎せ返る廊下

家も電柱もみんな突き出る影としての迫り

風冴えて死んだカラスをつけ回す

村光る虎の胃に虎児閃かせ

筏は空虚の広さをしている漂わず

絵皿にスカンク震えて少しずつ馴染む

花わずらい土剥き出しに笑う膝

藪に語弊ありひっそりと途絶えた肉

泡消えろ消えろと打つ鬱血した足

和紙光るが天ではない森深く白髪

書き写すノイズは平行四辺形

だんだん叩く音短冊を焼く鳥だよ

新聞開く輪をくぐるクラクフにいる

床に散った水滴にチップ埋め込む宇宙

予報受けて押さえる頬も流れよ雲

夏二度来て泉に沈むアルマジロ

湾揺する嘆きが風の実を目指す

集めて炊く蛙の微塵と思う微塵

息ひと筋窓はほのぼの外を呑む

砂に浸かるシルクハットへしなる夜道

肖像画の陰に花びらを散らす切っ先

遠縁吐瀉宿すべき赤みのみめり込む

粉の治世常にすえ充満する空位

液覆う静電気なお凍てつく春

肋骨擦れているような古書引き抜くとき

浴槽に靴を預かる四面楚歌

無辺なる狐が在り方だった去ね

留め具なしの打診見ている来るべき窓

漫ろに本撮って薄くしかさばる風

触れゆく気の地層と見えてバス停まる

藻屑踊るあわれ人には戻れぬほど

柱にわたしの指が揃う日レンジは開く

手袋轢かれて轢かれて山の緑の谺

山肌千々に窪み湯気悶え清水に歯列

折れば三角になる紙ぼくも星座に学ぼう

撃沈を雲にして聞く深い椅子

逆再生の湖に花開く吠えて

休みなく低いビル群の影は殴りに

指紋照らす画面空気吸うシーンで停止

いつ絡みいつ眠る蔦睫毛と消え

床に弾む米次は耳たぶの群れ

匙型の島で掬えぬ車掌の胸

プラスチックの断面を置く定時まで

閉じたドアに螺旋を探しているという手話

売人花を摘む前途に土削る舟

黙祷研ぎ澄ませば遥かにヒヒの共食い

慕情砕く滝に剥離紙継ぎ足して

ひとりひとり背筋を伝う時計台

川囁く寺院からの絶え間ない叫び

素焼きの枝接ぎ故郷より遠くマグ

墓も素朴もただ突起しているクリーム

白日に楕円と見え繊維質の怠り

首長来て寝袋に詰まる精肉店

犬の背の乱れよう僻む老蛇の中

しばらくのひと耐えがたく佇む地理

氷解けて無の上下にパースを設ける

星よりも鳥たち鳥同士の衝突

宮殿継ぎ目なく積む時間を滅ぼすため

縁側に人喰いチャクラ閉じている

ブランコ漕ぐ宵へ小石を吸う国へ

なくてもいい鉢に竿笑みそびれている

手と家の距離うちそとの区別なく

逃げ場のない模擬の過密に花が見える

後光に倦む雲の中からヘリの音

毛の束を飲みなお崖はカルバドス

ひとの唇絞る緑のスライム詰め

ポケットの月を叩くんじゃなかったビスケット食う

くすみたい遠く静かな凧揚げに

仮面を零れぬよう凝固した者よ踊れ

庭で過ごす拡声された死後のミサ

光にへつらうとき終焉の象現る

署名のペンかたや吹き飛ばす工場の扉

穢れ木立と互いに見透かす踵に泥

ブザー弱々しく紀元前おもう

あらかじめ産毛に満ちているドレス

音色して悪しき野に駆る死出の柿

蛾の轟く眠りに卑劣な旗ひらひら

いずれくべる薪を娘の名に落とす

朱飛び交う仏滅今は花盛り

川面に断つ人を殺して乾く脛

渦巻かなければ通れるのに意のままの笛も