フグを刺す階段の凹んだ部分

深紅の蝋だから鳥籠置く館

寝た鳶職に台車叫びひとつひとつ植林

トパーズの蝦蟇鳩尾で温める

瓦礫に瓦礫の淡さが棲む雨合羽を着て

爪の黒い光沢に肉切る女が微笑む

幻肢は整数図らずも弧を描く腰

迷路解く梅の辺りが騒がしい

鬱状の気体を皮膚で編む心

粉の溶けない雨が糸引く戦地の窓

能面まさしく朱のスイッチ生卵で押す

億の首を藻にしまうフラミンゴの音信

焼かれて煙になる詫び状飛び降りて無事

涸れ果てた井戸を空振りする流星

初版の緑地にカルタの峰高所は粘る

形状の記憶湖上に満ち歌声

照り合い照らし合う銅・青銅・名月の鬼門

胡麻噴く首のない市民広場に行けない

恋する多面体の座標砂漠で消える

音読は叫びとなる旧校舎の夕暮れ

水の夜這いを田に敷くべくチョコ地を溶け出す

機は熟せず生肉甘い後五分

雷鳴で倒れた電池が指すロッカー

トランプが散らばる女神はレバーを引きに

ダンス・レッスンなく突き詰めて川の光

性別のオルゴールに針見失う

サボテンらしさよ鳥なのか奇しくも岩ならば

片目にウサギは三ツ耳を買い牧歌脅す

雲を映す苔泣きながら掻き集める

エルフの耳は尖っている切ったからだ妻が

塩携え山かもしれない鐘を打つ

こぼれた水を頼りに綿棒星をなぞる

血鮮やかにコンロの火まな板を囲む

巨躯めく紺時空の果ての宿を履く

虎に雫振りかける写真の街伝わせ

コーラ入れとく傘立てどこ塀溶けて暑い

祖父は重力の塊声出すたびに増える

テレビの裏の隙間三角道理で甘い

手暗がりに血を塗るクレヨンだけで破る

また一歩鍋の音して蓮の花

看板を破裂のポーズのまま食う死者

鋭利な桃流れて老婆の髪ぬめらす

魚を出す食堂にシャツ裏表

正座しているかかとに沼おかしいまだ見える

歯の付いたコップ奥まで内乱浴びて

余生は声がよく響くから川辺の老人

種を絶ちに不凍船二等船室

電柱二本使って泣く轢かれた板チョコ

玉手箱犇めく傍ら目から鱗

湯の煮え切らない音だ百害が来ている

怪鳥破れてそこら中に舌鼓響く

田以外何もない平坦を雲は性欲

地の水天に跳ね上げる皮膚ばかりにモザイク

バスに満たすバス浮くほどの花の蜜

寝てプラスドライバーでクッキーを締める

粘液を埋めたいひかり針地獄

編み癖が痣になり人妻になる

ケーブル余るロールスロイスまでの距離

贄捧げて原住民ほろ苦くなる

恫喝テープから流れ売り場の茄子押す

過去から来て霧にスプーンみたいな竜

定規がないビデオだテレビもあるペンがない

きれいな円に嫉妬している夜は長い

教室の密かな角度海底にも

セピアの液煮魚から室の奥に当たる

風吹けば変な草が面会に来る

座布団の中身夕焼けに引きずり出す

重力を刺す包丁振り子が痛くて

北壁にパネルの裏が降り注ぐ

遠く離れた兄弟の傷こちらマリアナ

屈折せず椅子浸され酢に曲がり角

ラジオの電波にエビ乗せる名付け親と歩む

素性知れてダイヤルの秘密番号甘い

ビンにこびりついた粉肥沃どこまでも稲穂

トカゲの目を焼いて明かりに炎天下

取引として吊るシャツの袖が長い

シャンパングラス傾くバターから農村

花火って名前みたいな戸籍めくる

臓器澄む電車の中開いて切り開いて

もし世界があれば明日は晴れ花見酒

墓前にファンタジーあら奇遇ねと像の女

沈殿溌剌と空想の友となりゆく

パイプ敬老敬老と鳴くダンプぶつかり

セラミックの蛇死滅せず小屋の小部屋

烈火の如く幼児の足の指を舐める

神髄は物だ渓流に突き立てる

小数点以下に花咲き乱れ下山

耳垂れ下がる隙間からチーズケーキ焼く

広場でララバイねじ込まれ鋳潰され鐘

爛れた図形に象徴なく鳩射出し晴れ

キャンプは細胞みたいに母なる大地を受け継ぐ

ワックス塗る分子模型に春の廊下

旅行する象に目指され器も迷惑

棘だらけだ自販機すらどのボタン押しても

炭酸抜くさても清らかな謁見

マフラーと壁金属であとドーナツ

遥か土星に髪逆立てて牛飼う女

方眼の次元に眉間を置く感じ

蝋燭を逆さに濡れた路面の愛

鶏絞めるフリをシャツで牧草地染める