糸引く涙が屈折して悲しい翼になる

来年の日当りへ散らばる貨幣

わたしがわたしであるいびつさ社に持ち帰り検討

王ら率い毛玉が杖を突いて来る

ビル五階に灰の色を分からせる光

声と杭の通信を拒否落下速度

異星の異物で刺殺され血を吸い込む嵐

眩むほど死んだ蛾を浴び泥蹴る鹿

理科室で爪と虚妄を交互に切る

餓死己の全長で突き破る書画

塩振って遠い群生地に味付け

ライブハウスを受光し尽くすゴムの茨

証拠の紅茶小鳥が殺せるほどぬるい

言い忘れた泡吐き出してドームに帰る

曇天の骨身に産声沁みている

車の窓も花びら大円形掌握

扇宿せば盃黒く雉子枕

舟を出し沼を読み込む光りつつ

霊と雪が似ていなくとも石畳

弟の仮面の目にまだ残る光

折れた釣り竿ばかり大量に髪振り乱す

溺れるほど折り鶴に語の意味辞書バラバラ

木製の球傾げては山のミサ

カール大帝の咳に真夏の枝を貼る

海洋蠢く生息ともあれ養いの週

ボストン裂けたログハウスこころの地図爛れて

毒々しく咲く桜だった春の置き引き

振り子に倣い位の高い枠を嬲る

起きて石器の説明の必要な子等群れ成す

脳とろけて自転車のカゴと歩道を洗う

針葉樹も未知なればパーツ乾く間もない

巨大な薄目を目で見るからガレージ膨らむ

どこから来て濡れたカーソル鳥叫ばす

百階でようやく机に椅子が乗る

帰宅後焼かれた腕に文字 雲のほつれが見え

体温の間合いにくゆらせて大学

流転と書けば甚だしく手紙の次元

撚る手も枯れてアフリカの色は時が流す

相対的に飛ぶ階段の羽根を持つ鳥

卵揺れて銀河を印刷した食器

担がれている喉から鋤飛び出し富むか

求愛者のバッジにきれいな夜景を塗る

人うねらす壁ニタリニタリと蕎麦打つ

月も見えない秋の深さにねりからし

カルタは異物通学せよ緑の瞳して

シーソー一部ロッカーに捨て母船の酸素

その采配乾電池切る風を誘う

似合いの園に喉よ粘れ三千里ほど

箱開けて海洋世界に光さす

メキシコから来る手袋に人嵌めに

ビン埋めるこの空この海つくられたくて

地獄の摘める花回転しているが徐行

シール剥がすとどんどん孤独に番犬輝く

毒霧よわたしは啜り泣くか出かける

いずれ街ゆく悲しみそれは川底に

硬貨を宿す女性に金星見えている

めくれないか海だぞ崖だって生きてるんだ

クリアファイルから泡欠席してでも泣く

薔薇繰り上げたベランダに歯車噛み合う

座高にある惑星匂うほどに錆びよ

旅行と名乗る直線すべて愛の鞭

笑いは見えるのか少女おれの喉に三つ編み

家路にビデオカメラの光それが窓なら

空欄に派手なペンで穴掘るから見ててよ

懐かしい詐欺した紙幣が起こす風

自転車倒れぬよう壁に寄せジャムを塗る

支離滅裂にチューリップ咲く姉もいて

矢もなく弓を引く音もなく鏡は絵のようだ

続く空き部屋乾くとき舌の根の断絶

鳥の描く輪に鋼鉄の光沢注ぐ

肌も皮膚も語彙の遠隔へと映像

日曜の数字が赤くスポンジ焼く

ひとりで走ると明るい部屋定規しかない

社会の先生のコンタクトレンズで濡れている下駄箱

カップラーメンの浮くお湯が窓の外だろうか

俯くと胃の横に蛍が吊ってある

近代チカチカ吐息と雪混じり真夜中のエゴ

垂れても青は良い色だ星は蔑む

新聞のために開けてある窓が招く手の灰

わたしが草原ではハンガーだ濡れた衣服と星

ケーキで冷えた首にマフラー木炭運ぼう

広げてない支部から出ず刀を棚へ

自転車見つめる雨雲を二枚刃のカミソリ

食べて太る温かさよ橋の下には子亀

氷河の空白積み木並べてザリガニ作る

スイッチかわいいから押す部類の右辺を閉じる

樹海の底で何を知れば花みたいに散れるの

振動する敬礼への埋没着くべく

林間にうっすらハワイのロープ焼く

ビンいくらでも割った線路は角界を避け

目がぬらぬらしてる焼き魚を連れて青果店

事故あの人に降り掛かり粉末ココアのおいしさ

軽い返事だ雪だるまよ地名をつけるぞ

山頂へ落ちるとはロマン靴を磨く

餅詰まらせた犬寒空を揺らし揺らし

決せよ碁石のように宙を舞う間に

鉄柱を引きつけて囲む園児の輪舞

日が沈む今日もクレーンが見える満水だ

調印の木陰に蜘蛛の縞歪む

珍客去る大量の毛を穴に纏い