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鳥よ恋人よ領地に反響は消えゆく
山鳴りを山の誤報と知って聞く
茶番でひときわ胴体目立たす裸の木
乙女の半身は語感運動せず散りゆく
窓越しの己である闇服しとしと
不気味な蝶をぼくの懐へ逃がす
錬金術師を遊ぶ帰り道光の洪水
ドーベルマンなぜ悲しい液体だからか
屋根真っ白にヘラで埋め尽くす鳥影濃く
空ろな体がリンと鳴る朝よ寒いのか
浮気な山肌ぬめりがちに宵をたばかる
それは幻影だ、と言い尽くすバラバラの骨
里を知らず本懐にただ水流あり
浮き上がり午後の集団西へ向かう
さする手の一番奥に肘がある
解く帯を射る襖から炎の微笑
塩振れば鉄塊そこにあるごとく
タブーは身じろぎ傘ちぎれて暴風雨と話す
字の読めない怒濤にも終点はある
路上の家電を照らす春の日この清き受胎