防音のビル厳かにフタを置く

靴片方忘れた手で鉄持つ冷たい

樽に朝日が射す穴を孤独と呼べない

山ほどに熊を焼くべく遅く寝る

岸壁は根付かず長い左右の夢

やりきれない吐血の絵に海押して嵌め込む

馬車馬は病死した札束と十字架を残して

爪と家を換えて女は土を売る

神様水をこぼしました暗転して鶏肉

木の実の紫うららかに遁走を飾る

熱帯に猫の熟知を取り出す率

椀曲がりすぎて球になる筆の先

雪が棲む外から見た外には肉体

心臓の音する手招きぼくもしたい

捨象し捨象しバクテリアが太陽だったのです

夕冴えてフィリピン人の犬の毛足

糸の束ほぐれ封入されたビル

離れの孤独を深める装置に振り子が付く

魂吐く正統をいずれと今は木

語源に空白を課し大河を往く死体