十二の輪常々赤く西左

小箱に描画されがちに脱がすハンガーの服

月は欄外に落ち主人公が来た記憶もない

逆光の青年の拍手眼に響く

ハ行発する餌食を無辺の床ごとワックス

切手シートを畳から剥がす予兆の襞

父を二度呼ぶ噴火 八咫烏孕む

枕元に月とは違う赤い球体

この時間の果ての墓形に鉄手袋

宇宙はこんなにも薔薇園で馬を刺す

歌が流れ出し半紙を死後たらしめる

正午がてらにミシンで縫う出窓が吸ったカーテン

日の高い晩餐暖簾に幼児の腕

相席で勝手に軋む君が好き

風に吹かれ僕は胃の入れ子となる胃

コピー機からゼブラの皮膚離散の次も離散

昆虫を悼むタオルがマンション中に

包丁首に吊り餡子をたた食べる妻

二年六組「音・い」の机に泡を吐く

受精者など元よりドリアンひとつのデジャヴ