夏に秋を思う根でもなく埋めている

牙と鼻先が檻から見え犬ぐろい闇

脳震盪を泳ぐヨットへ咳き込む医者

三角の井戸金縁に泡を吸い

声帯を穿ち穿ち羽飾りの民

無常に結実する藻へ棒状なる月明

炎上閣下滑走路上の杖笑み潰す

水性マーカープールに消え象るアスタリスク

工員店から首にゅっと出しルイの治世

乙女が四人爪の土も落とさず花見

愛の呼び声する湿原の彼方も湿原

死んだ貝は花の陰にマッチ売り来る

ジャムに苺を乗せ子供が喪う逆鱗

昏倒した紳士のまだよろける部位に定規

身じろぎひとつが宇宙の幅と等しい山羊

術中にエーテル生ぬるく戦ぐ

未明の宴へ嶽神鈍く塗弓を引く

翡翠の字は入り組んで束の間の亀壊れている

墓に遮光体現れ髭膨大に伸ばす

ニタリと老婆青黒く映るソーラーシステム