足さばきの音時雨れてとろける道場

音声詩の韻をスルーアウトする生徒

ねぶりやまずの番ラッパは明日にでも吹く

船墜落する都で鳴いた豚の血襖

琥珀の虫を胸に折るべき億の指

声にならないものはない生きる怨みの強さ

頬をつねるひしゃげたスプーン取り出すため

巫女装束を響く姉妹であった声

割れた陶器を柵に恩人のいる盲点

暮らし合う心臓茶の間の宙仄かに

令嬢鬱血して無抵抗にブローチ飾られ

遺伝子脅かされ駅員ホースで煙を巻く

膨大な書が押す崖のぬるい椅子

列なす傘の上へイジェクトされ転がるディスク

殺陣が土も血も空へ跳ね上げる達筆

クロロホルム染み込みゆくハンカチにもぼくが

台車に直接蜂蜜乗せ行方をくらます

天井までグラスに入り切らぬニッパー

非団地めく屠殺塗布主婦シュミラークル

白地に白と知ってか湖上に月泥漂う