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夢を茶化す燭台で沈む窓だけの館
寸断された道路に梅の木をコラージュ
犬あやし膏薬の蓋に耽る密林
ディスクの穴連なり在りし日の磁極
ドーム状の空と目を断つ群青の水
縮むバネを恨んで死ぬよ放物線
循環する黒煙きれいな歯軋り左に
杖突く老婆の影重ねに助手席の老婆
障子を破りぬっと櫛土下座の髪梳く
随所にキノコ訝れば船団の影
ぼくは孤独だったか皮下に滝を打ち
話者ざれて魂を地滑りと呼ぶ
卵黄上下するビル・ビルの名の谺に
脊柱背泳ぎのまま貢がれ祠の灯火
飛行機で隠す民家の黒ずむゴム
煮えたぎる湯を出ても行き場のない鹿
十の位の空欄から風薫る帰結
密室のソファーの陥没戻っていく
ムニエル刻む歯は刑罰ならびに殺風景
純金の砂浜に満ちてゆく呉服