ランタンの前に受精後のカンガルー

再生ボタンは壊れ床に踊る星空

苦境細く銃は長いぐらぐらする首

壁の大穴にバイクを磨く自然の酸

左右異なる奥地に飛礫の当たる音

炉を出る煙に桜は色として残る

先に暮れる苔を老婆の二十歳もちぎる

死がかわいい馬の口から砂の滝

百花繚乱とばかり窓割る介護ベッド

肌の上の大気は布張り式場より夜

手紙で焼いたバナナをそ知らぬ顔で配る

帰らぬ人回廊に紙飛行機誘う

副葬するカスタネットの青い半分

地表にサンダル当てボーリング調査で通話

水没マンションからディスクよけてお互い無傷

首に巻く静脈よりも暗い虹

水星を憤怒の玉とする山鳴り

花震えるそこにあってはまずい傘

雷獣引く御者汝は晴れ渡る骨

犬の午後は神経を庭に遊ばせる