若い老人燃えないゴミの前でふやける

靴べらの狂いを餅で象る熱

観客等が笑い譲る舞台の椅子一脚

ほつれてばらけるキリトリ線を司祭選ぶ

ギリシャの柱と柱の間に凭れて消える

捨て猫の傘の部分が欠けている

泣く子に近い枝は既に唾液で濡れている

オリーブオイルで満たす生卵の消息

爪を立てるかつて木目と呼ばれた霞

色紙を捌き掲げて吸う晴天

澱みが噛む砂利を日陰で噂する

谷に落ちる馬から借りた首の晩年

丈の長い草の原にクジラ隠す

目の粗い殺風景の粉虚無僧

目に見える死の淵に立つ白羽の矢

渦挟まるドアと性別入れ替える

礼拝の仮定に腸の襞を見る

霧の総本山は下流 紅茶を蒸らす

月抉る暗礁の不義に溶けたチョコ

嘘が好きな茎を追えば寒い入江