空室の対角線が錆びている

台伴う生誕の目を取る細波

開いた本の下がガラ空きで赤い爪先

水を汲もうとしたジャガイモの末尾五桁

絵をちぎり輪にするするする生娘来る

坂の切れ目に老婦上半身フフと揺らし

室内へ穿たれた光ごと幹

虎だった円盤の歯形から下山水

鉄杭地中で分かれるほど星がぶれて見える

絶えた血筋を車全体で反射している

イコールの間の無地を執刀医

風しなる舞台に禁じられた株

秋に歌われた唄が裂く方眼紙は建築

コの字型の金具くぐる宥めに建つ家

道まっすぐに槍では留守番電話を聞く

紙筒漕ぐ船頭舌に切手を秘め

雨一縷に塞ぐ襟から北が庭

振り子の先の妊娠が凛としている

馬を飲むチュチュの胴から始業ベル

眩しい犬から床へ一続きにファスナー