目を閉じれば左岸に卒倒するゴーレム

眼鏡折り馴染みの虎を別に飼う

石を孕み十三番目の地層で寝る

胸のボタン電池高鳴るもう用済み

逆光花ごと浴びて家財へぶれる笑み

木棺を削ぐ泥濘に春きたる

喪のなりで覆う顔から砂階段

螺旋を書けば書くほどに孔雀を離れず

春はここにはと黙り敬う者らの渡り

犬の首と廊下に共通する真空

門を避けているのでなく皿が丸いから

クレーターと向き合う円かく進路図の九時

たがえる刃物すべて王を映しくるりと裏返す

遠い意識に避雷針集めて鳴く霊

乱雑な靴下つたない耳にする

帯濡れてホエザルの下に距離を取る

画数が省かれた枝を折る霰

槍当たってひらくドアに泣く者の昨日

夜明けの面にまずひとりピザを切れという

川流れ注ぎ込む鮮やかな濡れ衣