緑のシートの下は滝壺徐々に擦れ

ビル吹き抜ける舌雲泥までしならせ

はにかむ古稀パンをちぎってさらわれる

歯車回り孤独な調達に錆散る

脳が引力を知るときは床に落ちている

銃声を取り囲む焦げ臭い蟻

馬の脚の一本は木たてがみに果実

砂利吐いて尾鰭背鰭が付き始める

痣の境に置く兵と死ぬまで一緒

走る雨にドアぶつかりうねる鳩の放射

傘の花柄が垂れる壁の天窓開く

密室の外は震える象だという

羽毛叩きつけて来るものを朝とは呼ばず

偶然の円柱と旧居を分け合う

沼の藻に疼く乳歯をこらえて咲く

紐軽くて浮く大量に春の空

いくつか合わない波長に似て都市の電線

空の桶名残と濁りは橋の下

鋭い射殺体の草むらを分けると矢印

球面の中の森から顔以外の手足