病んだ砂地の青い館もう一縷の曇り

隠した片目の手の甲から羊が逃げていく

泣くまでの沈黙で木琴踏み割る

茎点々と結ぶ忘れた忘れてない忘れた

日が落ちて倉庫にもたらされた音読

晴れて港は静か蜥蜴の五肢を吊る

期待しないでほしい蛸は話せない波紋

封緘から散る雨見下す灯火携え

夜風照らされ魚の目をしている

葉を弔うスリッパ戻る術もなく

指の間隔磁石で掠める文明の滅び

被る布紫にして川囲む

鏡をハサミ型に切る目を映したまま

揃うワニの歯のひとつ録るために赤い

理由にしたい雨宿りの数奇数を手向け

流暢な仮名遣いで喚く羽の孤児

腐る戸が砂糖の墓になる本文

宇宙くるぶしまでねじれても水を踏む

戸外へ結晶する爪砂時計を返す

竜巻の名残に橋脚を嵌め込む