袋提げやもめに星空背負わせに

ヨーロッパにカタカナの手紙を送る

捺印するサイコロの目は七つの山

劇場静かオーロラは拳銃を照らす

国土の天に鉄パイプの涙が乾く

鳥浸かる病人五六人の摩擦

飯食うテレビの前膝もっと折ってほしい

旧宅の引き戸にぶら下がる手刀

路面電車来る枝をちぎり餌をねだり

ペンチで抜くほど強い草を勾玉に編む

粉一トンと運命ともに朝靄へ

根を上に草を集める牛の腹

振替に炬燵でものさし焼く団欒

テレビを消す死後の窪みに柿分裂

磁力もつれてダーツ一式いかだで流す

寿命よ長い首であれこのロープよりも

中継地に白湯置いて待つ星の巨大

号泣で揺れた糸まだ水の中

赤い花ひらく産婦人科の防音

離れた店肉を売るとき消えかかる

聞こえずとも縁の下からダムへ行ける

大地ほんの少し浮き長い手を安らがす

満足ほど割った実になく去年の柿

チェーン巻く告知に霰の占星術

苔売って太郎と決めた餡宿す

床の足を照らすな星間ノイローゼ

額縁の裏から糊ボウガンで狙う

ハンモックから落ちるべく多量の粉薬揺れる

他人の喉に指突っ込み鳴らすと鳥来る

ハープから塗料の調べする塩害

昼も電柱みたいに立つ赤子のケース

木の根ほど喉元に似ている木枯らし

薄紅とは色でなく干潟の冷えた唾

付き添いの背後に住む透明な部分

木箱の構造持つ孤児月の絵の中漁る

苦悩の日は近く安楽の盾歪む

暗澹なぜ軋むかもネジ奥まで届く

ゲート開く力なき市民皆熊手持ち

一睡の地球を蛍光灯に見よ

誘拐した子の首に直線がある

ゲロリまたゲロリと油を笑顔に吐く

芥子の壁に悲しい・帰りたいジェスチャー

花は開けば枯れるだけ今目を開いた

型を取る燃えた博物館跡地

白昼を返して無垢な傘よ媚びろ

網状にワイングラスの奥の礼拝

薄闇の恩を仇で湿らせている

包丁を入れた弁当箱に帰る

蛇逃がす隣人苦しむとき地声

きっとカラフルだから姥捨て山かち割る

夕焼けも夕裂けもありわんと鳴く

骨はピンと張った鎖大地と空の大使

壁迫るとバザーが暗くなる煙草

悔い散らさず路上の殻を真に受ける

宇宙服の中に地球の一部の川

過呼吸のまま角砂糖ダムに降らす

印字されてないレシート麗しく花屋へ

丘なんか越えなくてもいい地蔵が立っている

コール二回いずれ糸で巻かれる受話器

ランプから血背かれぬ血金歯明るく

見開くまた見開く雲の螺旋の色

服四角く切り抜き寒い塩の墓場

爪みたいにヨットも切るたくさんの夜

音の溝に金髪の虫の大量死

ぼくから先花にしてずっと立ち止まる

価値の果てで折れて階段に沿うコイン

緑の泥うたたねに海をかぶり渦巻く

喪の兆しにマラカス砕く大ムカデ

すりあわせて虫の音たとえば住民票など

肺に蛾を氷の罅は氷を出

噛みあうハサミの中で凍結した日陰捨てよ

馬を焼く日没近くその静脈

赤い衣装の袖にぎっしり腕を詰める

壁は自ら崩れた意志を持ち性営み

山の名を短く呼ぶ確かに切ない

線引く一挙に乱れなく目的もなく

裸の足首埋めプール青く空に網

別室の空気を吸って吐く掃除機

熊のワッペン付けてアラブの国を抜ける

ドーナツ甘くなく大聖堂鳴らす鐘

飛行機切なく飛ぶラッコを川から流す

コーヒー注いだコップをあばらに当てて笑う

水とろとろ家の壁を他人のふりして

夢十あり十字架あり神父の長い影

コーヒー豆挽く裏道またボクサー来た

老人も大仏も粥の前では器

串を配る手際の先にある水差し

宇宙を描くのが好き地球儀の陰に隠れて

鉄の箱に雪募らせる渡河の月日

流れた血が図となりまだ脈打つ東方

眩暈の歌の同心円踏むプラネタリウム

虎が鳴く模様砕けて秋の林

爪が伸び再度現れ木である報い

旅行しやすいシーソー遠くまでギザギザ

布団飛び出し海辺までが真っ直ぐな線

ネクタイしかない売り場通るとき食物

色とりどりの崩れた采配桶を祝う

緑豆に純潔捧ぐ一派その笑み

鳥居へ噎せるほど向かう鞠を火力と呼ぶ

長い靴と天の形踊るよりマシ