猿が近いという声が空き家の床から

非力に細くしておく棒たやすく水星

古都に女郎を切り抜いた和紙が宇宙であるとか

事務所鋭く四辺形として夏の空気

狡猾なのはもたらすからスコープを覗く

地球を嵌めるパラボラアンテナ攻めあぐねる

空気まっすぐ冷えてまだ来ず星がきれい

人であるから黙ることも旬金魚鉢

英霊ソファにヨーグルト色に母を吸う

半熟の名乗りを白衣の内に脱ぐ

宇宙と天球儀の隙間にガスと筋肉

鳥が魚を狙うブロックノイズと化して

不在のセラピストでなければせんべいを割れない

火の国は間近にほらガスコンロは王冠

浸からぬとて透明ぶるなよ春の空

円柱の影曳いているから眼が重い

薄いまま狸が丘に化けている

荒れ地に滝轟然と僧野晒しにし

塀が猫であることを抜きにしても春

山へ音の鳴る方へ止まなければ止むまで