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ぬいぐるみ踏む密室に呼吸貯め
噴煙に緑のマグネットの停止
童話のロマの死の藁に開く双子の目
狼の味確かめる夜の霧
瓦礫満載してロープウェイ知られに行く
漆器は黄泉の対にてしくしく牛乳注ぐ
二世帯住宅から生身ぬっと出る祝日
ハサミの向こう側に木登りする詐欺師
カートリッジの青減る吐血ネオンで焼く
今年と言われなければずっと茶を撚っていた
金箔にぼんやりと主婦孕みだす
査定苦く木の枝を春転げ落ち
第十六骨格標本当局の闘い
肉よ水源に夕べは虎に噛まれていた
ある日の境を達筆化ししなだれる熊
ネジの詰まった袋噛む老女干からびながら
超能力者が指輪を消すと犇めく池
ブルドーザーが来る週をコブラも空ける
満ち足りて柔軟になる馬の腹
凍てつく川息吹の主は一社員