一生涯皮膚を小さく閉じる踊り

指す学者の不在へ立てる黒い地形

水底嬲る切り身はひらひらした人魂

回避は先日済みタイムズ・スクエアを去来

噛んでも覚めない浮遊なら床に食器鏤め

陶芸家を引く牛が割るべく見ている壷

斧持って握り潰す絵叩き割る

ミサイル格納した背筋伸ばし呵々と義父

花咲く雑草煉瓦状にノイローゼを企て

一滴のパン蒸せば氷雨降る某市

窓から見える星全て火星我が身はガス

監視下に経理の女の不燃ハイヒール

夕方に難民として瞼を置く

霧の停止した近所から逃げられない

社員皆倒れる事務所のブランコ一途

神は死なず老い抜く人為の天の裂け目

鉄骨五万と町の昼の悲鳴として交差

祖父の息は肺に薄笑みは外の肺に

サラマンダーに火をつぐランプでもたれる箱

鋏だった液体を囲むフィルムの巻き癖