冷蔵庫しょって地割れの戸を叩く

庶民枯れゆく音近日をトロフィーでぶつ

紺ばらまき銃殺刑降る五階は無事

米落として泣く軽くなっただがもういい

激情のいかなるときも牛引いて

青ざめた帯いかに肉体指すべき

器に石吐いて燕の命がクルリ

凶作の田に昔から武士の咳

塩買って浅い小舟が隆起する

一行の消息ごと山振り下ろす

雨粒の数ほど先にピンが降る

不死鳥の泳ぎを帽子に伏せ推理

いつ刺せば今夜なのか針の先を焙る

高層階へニワトリ運搬する夜風

ダンサー回る店から五キロ離れて粗食

ニューヨークからニューヨークへ覆うほど肥大

溶けたガラス口を出て苦い床で結ぶ

匙に乗るしめやかさは子という谺

対極の星の襤褸はすべて鎖

掃除が楽で仕方ないこの涙もゴミ