憎くて墨を吐くための晴れ着の墨袋

妻のにじむかけ声が船から聞こえる

空長方形ならかぶれ柱まで囮

泥にへこむ虹を書いて人々さかさま

ポタージュの彼岸へ横に五重塔

釈然と滝を切る湖面のプロペラ

地球儀は回る最低でも巨木

カルシウム欠如して笑うみずがかり

浮上しつつあるカバとすれ違う夜明け

古着を飲む炎は袖幻肢を通す

嘆きの足音徐々に早くなる気球の上

鏡の前では無人を気取るカルテット

先に死んで誰かの口を塞ぐ花

まことしやかに草をちぎって捨てている

積まれたサンダルに下へとあるタクシー横転

熱帯にハサミを熱しにくる乞食

高原から脅されてワニの肉を配る

川を胸に浴びて球になるまで正座

ケーブル引く黄身に解体済みの蜂

不覚なる帰途に原野の蝶番