貝殻のスイッチ舐める時刻表

ぬくもりが後引くロープの巣に魚

グリーンピース奥歯に英霊たち語らう

仔山羊を繋いでいた首輪覗けば飼われる

看板ではない夕焼けだ力は不滅だ

ヘリとサイレンの音混ざり合う雲間に月

影あらば最も封じよ風の宿

不幸が鳴り公民館を呼び覚ます

靴箱に目薬落とす手の輪郭

鳥満ちて胃の中麦の粒を拒む

若き日の脈拍に崩れ去るビル

歩行できないトマトの代わりに土を焼く

六畳の琵琶に血を吸う蟻の群れ

ゼッケン無地ゆえ咳き込む金細工の欠番

喧騒の気体が舌を揺らしに来る

うちわで扇ぐほどの世に適齢の器

バケツに水の中枢を置く昼下がり

油で滑る髪幾束もなく狐

誤操作消す操作に混じる愛犬の毛

階段とは部屋の爪痕を愛する行為

薄墨を半日としいずれ死ぬ筒

絵の具を食う虚ろな目に少年はいた

窓の形式模倣して事務員きらめく

街角濡れて苦しむかもしれない材木

苦しくともドアはドア川をこちらに開く

ねじるところを見られて血縁が始まる

遠方から窓に吸い付く良い知らせ

プラケースの塩溜め金魚が一十百

三次元のモザイクだった積み木ぬるい

お腹の中に空気があるよ死んだあとも

午前が終わるシャツ取り込んでも取り込んでも夜

コピー機突き落として語尾のハート抉る

断面で滑る頭を持つ白馬

忍ぶガラス円盤状に初夏の庭

目を閉じてにんじん枯らす空の書架

髪遺し滅ぶ竹にかぐや姫の生爪

童女ドス黒い茶に袖を濡らし夜叉

高低差のない夜空にカツオ節ふわり

湯けむりから火花ラムネ瓶ピンクの内包

かくも渋々認めるものか羽根の在り処

スポンジケーキから色が失せとおせんぼう

オルゴールが売れた店からフランス語

館の留守にバランスボールと箱の不可侵

牛乳飲む鳥食い鳥見る違和感に

帰港した光が破く山羊の鼓膜

肉食のカタに地球のぬめる星

水その色その夕べこの身は線さながら

仮の記憶トタンの錆として浮かぶ

旅客機の透明度低く濁るカフェ

ずっと白と青が見える録画にわたしがいる

星が冷やす団地黒々と風を巻く

夢に見て安全に立つ場所が庭

合図に揺れる国旗休みの玉子焼く

梅舐めてそこかしこ焼け野原にせよ

グランドキャニオン覆う卑劣なサスペンダー

翌日の家路をたどるぬくい糠

沐浴しに銀世界へ尾を従えて

焦らすと揺れるテープ長いどこまでも行ける

海胆のような原点から拍手が聞こえる

太陽映す瞳は妊婦に鍼灸

回転する板と裸に同じ軸

日も冷えた庫内で砂を身に着ける

参観日へ一緒にあかい口をして

しなる標高に紙丈夫な体で歩く

ホース引きずり横断する道花も線

中庭の直角に図工の空虚

鳥籠を通過する蝶然るに脳

匿名が透けて回路と似る葉書

精神はケーキみたいに揺れる椅子

舌起きず湖の底みたいに思う

兵士の靴履く民族ワープの巻き添えに

木の筒を魚に彫れば月満ちる

末永く焼け跡滑る麦の粒

夜光る米を農夫らは害しに

螺子クルクルパーに合図を十時半

スライムを領海に附し王家断絶

馬の産卵つねりに行く砥石を捨てて

流線は花の煙を宿す狐

金属のオーロラ洗う皿よりも

薬中の首を流れる雲の影

落雷の白身に赤き途上の生

カフェ西向き質素と窒素がずれ始める

星間を幅に持つ帯兆す黄色く

徒へ寄せ余生の火花となる花粉

滲む靴底の斜面は生きて右折禁止

電源プラグを砂に埋めたサボテンと繋ぐ

ヨーグルトの詰まった牛を撃つガンマン

蝋燭包んで明るくなる半紙の虚を突く

みぞおちに定規を隠して来た養父

ヘレンケラーの伝記を裂く消えない番地で

煙断つギターも花時計に勝れば

フラスコにも底と呼ばれる遺恨あり

行進曲逆光の無垢に従わず

マシンとしての死あらがう陽はその場で回る

軽で捲るカーテンと紺のハイヒール

輪の中にいる塩一粒飲んだ日から

大海砕けて風船みたいに鉄の魚

清書求む付近セロハンテープで盛る

底偲びの瞼薄めてする散骨

架空図の焦げる音して粉薬